野菜の形


昨日、最後の人参が無事出荷され、今シーズンの野菜の出荷は全て終了致しました。

今年も多くの方から色んな感想、コメントをいただけました。そこには多くのヒントが埋もれています。それに気付けるかどうかは我々の成長次第ですね。

 

お客様からのよくある質問として「大根は曲がってても味は一緒だよね」とか「人参の形は悪くても中身は同じだよね」とかって言われることがあります。

 

その場では「Yes」と答えますが、心の奥の方では「No」だと思っています。

 

日本の野菜の流通において、野菜の形は大変重要な要素です。大根は白くて真っ直ぐなもの。ブロッコリー は花蕾が丸くて山形のもの。農業者はその形を目指して栽培します。収穫を迎えて、その形状になっていないものの多くは廃棄されてしまいます。

廃棄される野菜を前にして、上の問いがあればその時は「Yes」と答えるでしょう。海外では日本ほど形状にトヤカク言う国はないでしょう。それは食べる事ができるか、販売する時にそれほど困らないか、程度が選別基準になっているのではないか、と思われます。

過度に形状にこだわるあまり、そもそもの農業栽培技術の目線がずれて行ってしまっているように思われます。「野菜の生命力を最大限に発揮させる」のが農業技術だとすれば、現状は必要以上に耕し、必要以上に肥料を施し、必要以上に農薬を散布していると思われます。そして、いい形状にならなかった時は廃棄となってしまいます。

 

しかし、野菜には本来の姿形があると思います。その作物が本来の生命を思う存分に発揮できる環境を整えてあげると、作物は自ずと本来の姿形になるものだと思っています。そして、その形は美しく、生命として完全な形をしていると思っています。

そんな野菜を見た時、人間の脳の奥の方にある何かが反応して「美味しそう」って感じると思います。そう感じる野菜の姿形こそが本来の形であり、農業者はそこを目指さないといけないのではないかと思います。

 

そんなわけで、本来の姿形をしていないものは本当は中身は同じではないのかもしれません。なので、心の奥の方で「No」って思ってしまうわけです。

 

そして、この人参を見た時に、無性に大量に人参が食べたくなったのでした。